大規模修繕工事の進め方
flow
管理組合・オーナー様へ
- STEP
- 01
発注方式の
選定について- STEP
- 02
施工会社の
選定- STEP
- 03
着工~竣工
- STEP
- 01
発注方式・監理者の選定
1-1 発注方式・監理者の選定
大規模修繕工事では、発注方式の違いによって相談すべきパートナーも変わってきます。まずは、管理組合様のご意向に沿った発注方式を選び、それに適したパートナーを決定することが重要です。ここでは、それぞれの発注方式の違いや特徴について、概要をまとめてご紹介します。

※「工事監理」とは、お客様の立場に立って工事が問題なく行われているかチェックすることをいいます
設計監理方式
工事の内容や施工会社選定等を
じっくり検討することができます
- 技術力のある設計事務所や管理組合の支援団体、日常管理を担っている管理会社など、信頼できる専門機関を活用できます。
- 工事内容や金額については、施工会社とは別の第三者によるチェックを受けることが可能です。
- 管理会社を活用する場合は、修繕に関して十分な技術的支援が可能であることが前提となります。
- 工事における管理責任者を明確に設定することができます。
- 設計監理を依頼するための費用(設計監理費)が必要となります。
※参考:住宅金融支援機構
※「工事監理」とは、発注者(お客様)の立場から、工事が適正に進行しているかどうかを確認する業務です。

責任施工方式
企画・設計から施工までを一括で施工会社に発注する方式です
- 管理組合様は、施工会社のみを選定します。
- 工事に関する打ち合わせや調整は、管理組合様と施工会社が直接行います。
- 工事内容は施工会社ごとに異なる場合があります。
- 工事の内容・費用・施工会社の選定は、全て管理組合様の判断で行います。
- 第三者による工事のチェック体制が整いにくいため、工事の内容については修繕委員会が区分所有者様に丁寧な説明を行う必要があります。
※参考:住宅金融支援機構
1-2 建物調査診断
大規模修繕工事を行うにあたり、対象箇所の劣化状況を正確に把握するために「建物調査診断」を実施します。
基本的には、選定したパートナーが共用部の現地調査や、区分所有者様を対象としたバルコニー周辺の劣化状況・ご要望に関するアンケートを実施します。
POINT
劣化の箇所や進行状況は、建物ごとに大きく異なります。そのため、建物調査診断は必ず実施すべき工程です。
加えて、理事や修繕担当者様が自らの目で劣化状況を定期的に確認することも重要です。
施工会社に依頼
無償で対応してもらえる場合があり、コストを抑えられる可能性があります。
ただし、会社ごとに診断書の書式が異なるため、内容を比較検討するには専門的な知識が必要です。
管理会社に依頼
日頃から管理を委託している管理会社であれば、一定の公平性を持った調査が期待できます。
日常的な建物の状態を把握している点も強みです。
コンサルタント会社
(第三者機関)等に依頼
中立的な立場から、公正かつ厳密な診断が期待できます。
一方で、有償となるため、あらかじめ予算を確保する必要があります。
1-3 修繕内容の検討と基本計画・資金計画の作成
長期修繕計画や建物調査診断の結果、区分所有者様からのご要望をもとに、大規模修繕工事の内容を検討します。
POINT
マンションや建物ごとに劣化の箇所や進行状況は異なるため、建物調査診断は必ず実施しましょう。理事や修繕担当者様が定期的に現地を確認することも重要です。
1)修繕内容の検討
選定したパートナーの指摘・助言・提案を受けながら、工事の範囲や仕様を検討し、決定します。
2)基本計画の作成
決定した内容に基づき、パートナーが工事全体の基本計画を作成します。
必要に応じて、概算予算を算出するための基本設計も実施します。
3)資金計画の作成
工事費の概算、設計・監理にかかる費用などを含めた総額を算出し、資金計画を立てます。
POINT
資金が不足する場合は、以下のような選択肢を検討する必要があります。
- 金融機関からの借り入れ
- 区分所有者様からの一時金徴収
- 工事時期の延期による資金の積み立て
- 工事内容や仕様の見直しなど
1-4 理事会・総会での承認
検討された大規模修繕工事の内容は、理事会および総会での承認を経て進められます。
POINT
以下のケースでは、総会での決議が必要です。
1)共用部の変更
通常の修繕工事は「普通決議」で進められます。
※普通決議:出席者の過半数の賛成で成立。
ただし、エレベーターの新設など著しい変更を伴う場合は「特別決議」が必要です。
※特別決議:出席者の4分の3以上の賛成が必要。
2)規約の改正
管理規約を改正する場合は特別決議が必要です。
(例:排水管の区分を専有部・共用部に明確化するなど)
3)決議済内容の大幅な変更
過去に決議された計画に大きな変更が生じる場合には、再度の総会決議が必要です。
(例:工事範囲や資金計画の変更など)
1-5 実施設計
基本計画(基本設計)をもとに、より具体的な実施設計をパートナーが作成します。
この設計には、材料・工法・仕様などが盛り込まれ、見積書作成の基礎資料となります。
POINT
理事会や専門委員会の方々も、設計内容を把握し、理解しておくことが重要です。
1)設計図書のチェック
パートナーが作成した詳細設計が、基本計画に沿っているか、過剰な仕様になっていないか、競争性を確保できているかを確認します。
2)工法・材料の理解
理事会や専門委員会のメンバーも、工法や材料の概要を理解しておくと判断がスムーズになります。
3)施工条件の整理
見積書に記載されている施工条件を事前に確認しておきましょう。
(例:工事代金の支払い条件、資材置き場の確保、共用設備の使用制限、水道光熱費の負担など)
4)工事費の増減に
関する明文化
設計変更や実数精算などにより工事費が変動する場合は、その対応方法をあらかじめ設計図書に明記しておくことが重要です。
5)その他の確認事項
・アフターメンテナンス(定期点検)の有無
・保証期間の明記
・施工管理体制の整備状況なども確認しておきましょう。
- STEP
- 02
施工会社の選定
2-1 施工会社の選定
大規模修繕工事において、施工会社は重要な役割を担います。その品質が、工事の成果や建物の将来に大きな影響を与えるためです。施工会社を選定する際は、管理組合内で選定基準を設定しておくことで、適正な判断がしやすくなります。
また、管理会社やコンサルタント会社が関与している場合は、選定方法についてアドバイスを受けるのも有効です。ここでは、施工会社の主な選定方法を4つご紹介します。
方式 | 内容 | POINT |
---|---|---|
入札方式 | 入札に参加する施工会社を、公募または指名により選定し、競争入札を実施します。基本的には、提示された価格のうち「最も低い金額」を提示した会社を選定する方式です。 | この方式は価格が重視されるため、施工の品質や長期的な修繕への配慮が十分にされない可能性もあります。 |
特命随意契約方式 | 特定の1社を選定し、その会社にのみ見積書の提出を依頼する方式です。 | 指名先の会社とすでに信頼関係が築かれている場合や、日常的なメンテナンスを依頼しており安心感がある場合などに採用される方式です。 |
見積り合わせ方式 | あらかじめ選定した複数の施工会社に見積書を提出してもらい、その内容を比較・検討する方式です。 近年では、マンション管理に関する専門誌やWeb媒体、管理組合の掲示板などを活用して公募を行い、そこから候補を絞り込むケースも増えています。 | 金額だけにとらわれず、仕様書の理解度や施工技術、過去の実績なども含めて総合的に比較・検討できるため、管理組合様のニーズに合った施工会社を選びやすい方式です。 |
2-2 総会での決議
理事会での決定をもとに、大規模修繕工事に関する総会を開催し、区分所有者様の承認を得ます。通常総会の時期と重ならない場合は、臨時総会として実施します。
1)工事内容
大規模修繕の目的やこれまでの経緯、今回の工事の対象箇所とその範囲、工事期間、費用の見込みなどが説明内容となります。
2)工事費の調達方法等
修繕積立金を取り崩す際には、総会での決議が必要となります。
また、資金が不足する場合には、その調達方法についても総会の承認が必要です。借り入れを行う場合には、返済に修繕積立金を充てることについても、別途決議を得る必要があります。
3)施工会社選定の
経緯説明と決定
経緯説明と決定 施工会社の選定にあたっては、採用した選定方式とその理由を説明し、総会で承認を得ます。そのうえで、理事会で内定した施工会社について、管理組合として正式に決定するための決議を行います。
4)連動する決議が
必要な場合
共用部分の変更や管理規約の改正が必要な場合は、区分所有法および管理規約に基づき、所定の手続きに沿って決議を行います。
2-3 工事請負契約の締結
総会で正式に決定された後、選定された施工会社と工事請負契約を締結します。
ここでは、契約にあたって必要となる書類などについてご案内します。
1)契約書本文
契約書の本文には、発注者および請負者の名称、工事名、工事場所、工期、引き渡し時期、請負金額、支払い方法などの基本事項を明記します。発注者・請負者双方が記名捺印のうえ、各自で保管します。
2)工事請負契約約款
発注者と請負者がそれぞれの立場で果たすべき義務や取り決めを定めたもので、通常は「民間(七会)連合協定 マンション修繕工事請負契約約款」が使用されます。
3)設計図書
工事代金の根拠となる設計図書を契約書に添付します。これには、仕様書や設計図に加え、現場説明会で使用した資料、質疑応答書、双方が合意した内容を記した覚書なども含め、全てを添付しておくことが望まれます。
4)見積書・工事内訳書
契約金額の根拠となる見積書および工事内訳書を添付します。
5)工程表
大規模修繕工事の着工から竣工までの工程を、工種ごとに明記した工程表を添付します。
- STEP
- 03
着工~竣工
3-1 工事説明会・
工事着工前の準備
大規模修繕工事の着工前には、区分所有者様や居住者様を対象に「工事説明会」を開催します。これは、居住したまま工事を進める大規模修繕において非常に重要な取り組みであり、工事を円滑に進めるためには、皆様のご理解とご協力が欠かせません。
1)工事説明会の開催
工事内容に関する説明が中心となるため、説明の多くは施工会社の現場代理人が担当します。
なかでも重要なのは、日常生活に影響を及ぼす工事(例:網戸の取り外し、バルコニー使用の制限、車両の移動、玄関扉枠の塗装時に在宅が必要な場合など)や、安全に工事を進めるための取り組みに関する説明です。
また、居住者様との相互理解を深めるために質疑応答の時間を設け、疑問や不安を丁寧に解消していきます。
2)工事着工前の準備
工事に関する直接的な作業とは別に、あらかじめ行っておくべき主な準備には、以下のようなものがあります。
- 〇近隣住民への挨拶回り
- 〇各住戸のバルコニー内にある私物の整理・片付け
- 〇工事車両や資材置場のためのスペースの確保
- 〇防犯対策の徹底
- 〇小さなお子様や高齢者への安全配慮の確認
- 〇工事内容を掲示するための掲示板の設置
- 〇問い合わせやご要望を受け付けるための工事用ポストの設置など
3-2 着工・工事期間中
着工後は、これまで以上に管理組合様・パートナー・施工会社の三者が緊密に連携することが重要となります。工事期間中は、管理組合様・パートナー・施工会社の三者が中心となり、以下のような取り組みを行っていきます。
1)定例会議
三者による定例会議を、月に1回程度のペースで開催します。会議では、工事の進捗や工程変更の確認、施工状況のチェック、区分所有者様からのご意見・ご要望の共有、設計変更の必要性についての協議、安全面や防犯対策の確認などを行います。なお、定例会議の内容は全て議事録として記録・保管します。
2)広報活動
工事期間中、施工会社は居住者様に対して随時広報活動を実施します。
工事の進捗状況をこまめに伝え、居住者様の生活に影響を与える作業については、事前にチラシの配布や工事用掲示板への掲示などを行い、丁寧に情報を提供します。
3)中間検査
管理組合様、パートナー、施工会社の三者が立ち会い、中間検査を実施します。
不備や改善点が見つかった場合は、その内容を記録に残し、該当箇所の補修など、適切な対応を速やかに行います。
4)設計変更と追加工事
大規模修繕工事には、着工して初めて明らかになる要素(例:見えなかった劣化箇所の発見など)が多く含まれます。より良い工事を目指すほど、現場での設計変更が発生しやすくなります。設計が変更される場合、追加費用の発生や、減額の可能性もあり、実施には管理組合様の判断が必要です。設計変更時は、施工会社による過剰な追加工事を防ぐためにも、慎重な協議が求められます。
3-3 竣工引渡し
大規模修繕工事が完了した際にも、管理組合様として対応すべき事項があります。
1)竣工検査
工事完了後に実施する最終的な検査を「竣工検査」と呼びます。これは管理組合様、パートナー、施工会社の三者立ち会いのもとで行われ、不具合が見つかった場合には記録を取り、その後に補修を行ったうえで再確認を実施します。
2)竣工図書の受取り
大規模修繕工事の内容を記録としてまとめたものが「竣工図書」です。これは今後のマンションの維持管理において非常に重要な資料となるため、管理組合様にて適切に保管する必要があります。
●竣工図書に含まれる主な書類
A)パートナーとの契約書
B)施工会社との工事請負契約書
C)工事見積書(詳細内訳書を含む)
D)工事仕様書・施工計画書など
E)工事完了届出書
F)竣工引継書(保証書、竣工図、工事費清算書、工事監理報告書、材料リスト、アフターメンテナンスに関する書類など)
G)竣工写真・工事中の記録写真
H)工事期間中に配布・掲示された広報資料(チラシ・掲示物など)
3)最終工事代金の審査、確認、支払い
工事費の清算書を精査し、その内容を確認・承認したうえで、最終的な支払いを行います。
追加工事が発生した場合や実数精算方式を採用している場合には、契約時の金額と実際の最終支払額が一致しないことがあります。
4)工事完了の確認と通知
工事が完了した際には、管理組合様として正式に完了を確認し、区分所有者様など関係者へ通知を行います。また、工事の経緯や結果について説明するため、「工事完了報告会」を実施することもあります。
3-4 アフターサポートの開始
私たちは、大規模修繕工事の完了を、お客様との長いお付き合いの始まりと捉えています。
工事後には、あらかじめお約束した定期点検(アフターメンテナンス)を確実に実施し、建物の安全性と安心を継続的に提供しています。
工事中に発生する主な
影響について

足場の仮設
バルコニー外側には足場が組まれます。安全確保のため、足場内には立ち入らないようお願いいたします。工事中は現場代理人や作業員が足場を通行します。プライバシー保護のため、レースカーテンの使用と窓の施錠をお願いしています。

メッシュシートの設置
塗料や粉塵の飛散を防ぐ目的で、足場の外側にメッシュシートを設置します。当社では、採光・通気性に優れ、防犯性の高い黒色のメッシュシートを使用し、圧迫感や閉塞感を軽減しますが、工事期間中は視界の制限が生じますので、ご理解をお願いいたします。

車両の移動
足場の設置・解体時や機械式駐車場の塗装工事の際には、敷地内または外部の仮駐車場への一時移動をお願いする場合があります。ご協力をお願いいたします。

1階専用庭への足場設置
建物から約1メートル範囲内に足場を設置するため、設置範囲にある物干し台や植栽などは、事前に移動をお願いします。

BS・CSアンテナの対応
バルコニーから張り出したアンテナは、足場に接触して破損する恐れがあるため、設置前に取り外しをお願いする場合があります。視聴継続を希望される方には、有償で足場外側への仮設移設も可能です。

バルコニー・
ルーフバルコニー内の作業
着工前に、置き敷きタイル・人工芝・ウッドデッキ・ラティス・物置などの撤去と保管をお願いしています。基本的に居住者様ご自身での対応をお願いいたします。
※室外機や物干し竿はそのままで問題ありませんが、配管の長さ等により取り外しが必要な場合もあります。

網戸の一時取り外し
バルコニー側の窓周辺での補修・塗装・防水作業においては、網戸の破損防止のため、一時的な取り外しをお願いすることがあります。
※窓の内側に設置されているプリーツ網戸は取り外し不要です。

エアコン使用の一時制限
バルコニーや廊下での工事に伴い、室外機を一時的に移動する場合があります。配管の長さによっては取り外しが必要となり、その間はエアコンが使用できなくなる可能性があります。

外壁補修による騒音・粉塵
外壁タイルのはつり作業や補修の際には、大きな音や粉塵が発生します。特に振動を伴う作業では室内に響くことがありますので、あらかじめご理解をお願いいたします。

廊下・階段内の工事
下地補修・塗装・防水工事など、さまざまな作業が実施されます。特に床の張り替え作業では通行に制限が生じることがあり、カラーコーンなどで区画・誘導を行いますので、ご協力をお願いいたします。

玄関扉枠の塗装と在宅のお願い
玄関扉枠の塗装時には、扉を開けて作業を行う必要があるため、居住者様の在宅が必要です。作業は2~3回、いずれも半日程度を予定しており、事前に配布するアンケートをもとに日程調整を行います。
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